
議会は3月・6月・9月・12月の年4回開かれます。そのうち、3月は新年度の予算、9月は前年度の決算が審議されます。決算については「決算審査特別委員会」が組織され、館山市議会では18人中9人の議員が委員となって審査にあたります。私は今年も委員に選任され、3回目の参加となりました。
10月号の広報「だん暖たてやま」にも決算のまとめが掲載されました。
🔗 広報だん暖たてやま(令和6年度決算特集)
広報には、歳入・歳出の内訳、市債や基金の状況、経常収支比率、実質公債費比率、将来負担比率など、やや難しい用語が並びます。
一方で、決算審査特別委員会では報告書に沿って事業ごとの質疑が行われます。委員会は非公開で、写真も残っていませんが、実質的な議論が行われているのはこの場なので、公開すべきだと思います。課長、部長が全員出席するため、会議室は毎回ぎっしりです。
🔗 令和6年度決算の報告書
実質収支と実質単年度収支

広報を見ると実質収支は黒字で、表面上は問題ないように見えます。しかし実質収支には積立金の取り崩しが反映されません。実際には「実質単年度収支」が約6億円の赤字となっており、昨年に続き大幅に基金を取り崩していることが分かります。

特に重要なのが「財政調整基金」です。これは一般財源の不足を補う“万能型の基金”ともいえるもので、景気変動や自然災害に備え、一定の残高を確保することが望ましいとされています。

館山市は令和4年度に「令和9年度に財政調整基金が枯渇する可能性」に言及し、第4次行財政改革方針を策定しました。その後の積み増しにより、一定の改善は見られます。

委員会でのやりとり
事業ごとの質疑の最後に会計全体で「執行部として会計全体をどう捉えているのか」と質問すると財政課からは、次のような厳しい答弁がありました。
「財政が厳しいという言葉は議会でもよく出るが、財政課としては来年度・再来年度の予算をどう組むのか、本当に頭を悩ませている。主要財政指標6項目がすべて悪化しており、県内でも同様の自治体は数カ所しかない。」
指標6項目とは以下の通りです。
- 基金総額
- 財政調整基金
- 市債残高
- 経常収支比率
- 実質公債費比率
- 将来負担比率
財政危機は過去にも経験した本市ですが、今回は構造が異なるとの認識も示されました。議会向けのみならず、庁内全体に危機感を共有する必要があるという強いメッセージだったと感じました。
主な事業の審査項目(抜粋)
以下は委員長報告に挙げられた項目です。詳細は議会中継をご覧ください。
◆ 一般会計(認定第1号)
1. 行財政改革推進(事業仕分け)
- 奨学金貸付事業の廃止により 8,000万円の財源確保。
- ふるさと納税のPR強化で 約2.5億円の増収。
- 医療助成事業の見直しで 2,200万円の歳出削減。
→ 一定の財政効果があったと評価。
2. 公式LINE登録数
- 市広報紙や成人式で周知活動。
- 登録者数:1年間で1,000人増(8,000→9,000人)。
3. 公共ライドシェア(実証運行)
- 登録:353件、配車依頼:72件、実利用:36件。
→ 今後の改善に課題も。
4. ふるさと納税推進
- 成果要因:人員配置・返礼品開拓・PR強化。
◆ 民生費
1. マザーズホーム運営
- 会計年度任用職員を増員。土曜ルーム新設で就労家庭支援を強化。
- 専門職(作業療法士)常駐による支援体制強化。
2. 学童クラブ
- 必要人員は確保。待機児童28名(主に高学年)。
3. 子育て広場(元気な広場)
- 出張ひろば:71日間で444人参加。
- イベント開催日数:200日超、参加数:約2,400組・5,300人。
◆ 衛生費
1. 予防接種事業
- コロナワクチン接種率:当初60%見込み→実績20%。→ 予算の執行残発生。
◆ 農林水産業費
1. 食のまちづくり施設
- 地域内流通実証:飲食店22件参加、約9割が継続希望。
→ 効果ありと判断し、翌年度も継続。
◆ 商工費
1. サテライトオフィス誘致
- マッチングイベント:279社参加、26社と商談。
→ 前向きな反応多数との報告。
◆ 土木費
1. 道路維持補修
- 要望件数:年間1,000件超、未実施は20~30件。翌年度対応予定。
◆ 消防費
1. 備蓄食料の処分
- 主に防災訓練や飼料に利用。今後はフードバンク活用も検討中。
◆ 教育費
1. 教育相談事業
- いじめアドバイザー:教育支援センター長を兼務。
- 不登校児童生徒数:小30人、中78人(合計108人)。
- ドリーム(館山中の校内支援センター)で復帰支援など実施。
2. 若潮マラソン
- 収入:5,161万円(うち市の一般財源は約49万円)。大部分を自主財源で賄う。
◆ 財政全体評価
- 6つの主要財政指標がすべて悪化:
1. 基金総額
2. 財政調整基金
3. 市債残高
4. 経常収支比率
5. 実質公債費比率
6. 将来負担比率
→ 館山市の財政状況は極めて厳しい。県内でも類例は少ない。
◆ その他
- 森林環境譲与税基金残高:2,804万円
→ 木材利用事業(武道場・今後は小学校統合改修など)に充当。
◆ 介護保険特別会計(認定第4号)
申請件数:約2,500件/平均決定日数:36日
→以前より2日ほど短縮できている。
全体の印象
今回の決算審査では、個別事業の成果と課題に加え、市全体の財政運営が深刻な局面を迎えていることが明らかになりました。特に、主要財政指標6項目すべてが悪化している現状は看過できません。市民サービスを維持しつつ、いかに持続可能な財政を築くか、議会と行政が危機感を共有し、全庁的に取り組むことが求められています。