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R5年度決算にみる館山市の財政について

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広報「だん暖たてやま」10月号2、3ページ

27日に議会が閉会。9月は決算を含む議会でした。決算審査特別委員会も丸一日審議し、最終日の本会議でも全議員が認定しました。

昨年に続く2回目の委員でしたが、そもそも財政の読解は難解でして、資料を細かく読む市民もごく少数だろうという印象です。

こちらに資料一式は公開されています。
https://www.city.tateyama.chiba.jp/gyouzai/page100004.html

そこで今回は、広報「だん暖たてやま」10月号の「決算のあらまし」をもとに少しでも分かりやすく決算を説明できないかと試みます。

広報「だん暖たてやま」10月号は↓
https://www.city.tateyama.chiba.jp/files/300387435.pdf

館山市の財政は厳しいと聞くけれども、「実際のところどうなんでしょう?」

冊子を開くとまずは、2ページのこの図。

広報「だん暖たてやま」2024年10月号2ページ

実質収支は、昨年度から0.1億円プラスの7.5億円と黒字です。黒字ならいいじゃんと思うのですが、そこが民間企業と構造が異なるところです。

1ページ飛ばしまして、4ページ目の市債と基金残高をみてみます。

広報「だん暖たてやま」2024年10月号4ページ

市債とは、端的にいえば市の借金です。徐々に上がっています。

そして、基金残高はR5年度でガクッと減りました。

以前も書きましたが、市はR4年度にR9年度に基金が赤字となる試算を公表し、第4次行財政改革方針(いわば財政立て直しの計画)を策定しました。

R4年12月の広報に載ったのはこの図です。

広報「だん暖たてやま」2023年12月号6ページ

R5年度は財政調整基金は11億円の予測でしたので、R5年度決算は22億円で、少なくとも基金残高に関して、相当善処されたことがわかります。

しかし、現実的にはここからが正念場だといえます。

決算カードという、財政指標を1枚のカードに取りまとめたものがあります。こちらはまだ固まっていない「暫定版」なのでHPには出ていません。

R年度決算カード(暫定版)

ここで注目するのは赤線の「実質単年度収支」です。行政の収支は、基金からの出し入れができるので、この点が非常にわかりづらい。

実質単年度収支は、借金の返済や基金の出し入れなどを除外した、「真の実力」と呼ばれる指標です。R5年度は9.8億円の赤字。R4年度に比べて7.3億円も赤字が増えています。

実質収支が黒字なのは、基金を取り崩すなどした結果です。実際にその裏側では「借金が増え」、「基金が減っている」のが現実。単に実質収支が黒字だからよい!と喜んではいけないのです。

ここにきて、前置きしておかねばならないのは、行政の赤字はそれ自体は悪ではないということです。

民間であれば赤字はNG、黒字は「よいこと」です。一方、行政の黒字は、「国民、市民から集めた税金をうまく活用できていないこと」にもなります。必要な事業に使ってないから黒字になっているのでは?と内容の審査が必要です。

問題は、「実質単年度収支の赤字が続いてしまうこと」です。当然、基金は無尽蔵ではありませんので、いつか枯渇します。

自治体の経済的な体力が減れば、市税は自ずと減りますし、重要なのは国からの交付金は人口を基準に額が決まるということ。つまり人口減少で歳入も減ることが見込まれています。にもかかわらず、少子高齢化で、いわゆる市民福祉に必要な民生費(給付金面でいえば扶助費)は高止まりしています。

全国的な課題ですが、どんどん首が回らなくなってきているのが実態です。だからこそ、収入を上げる施策が求められますが、正直そこが民間と違って「金儲け」が不得手な行政。非常に苦しい局面にあります。

それでは、3ページ目に戻って歳入をみてみたいと思います。

広報「だん暖たてやま」2024年10月号3ページ

一般会計の収入全体のうち、市税は61億円、地方交付税は47億円、国・県支出金は64億円、市債は41億円、繰入金は17億円とあります。

この指標をどう見ればいいのでしょうか?一般的に、家計と比較してみることが多いです。

とある息子世帯の家計に対し、両親世帯が援助をしている想定です。

市税・・・給料
地方交付税・・・自由に使える仕送り
国・県支出金・・・使い道が決まっている仕送り
市債・・・親からの借金

これを館山市に置き換えてみると、全体の収入269億円のうち、給料は61億円(22%)、仕送りは地方税47億円と国・県支出金64億円を合わせた111億円(41%)、借金は41億円(15%)となります。

ほぼ、親に支えられて財政が成り立っている構造がわかると思います。さらにいえば、例えば少子高齢化に伴う福祉など使途が決まっている支出が多く、そのうちの自己負担もあるため、自由に使えるお金は、ほんのわずかしかありません。

ここで大事な指標が3ページ目の「経常収支比率」です。

広報「だん暖たてやま」2024年10月号4ページ

経常収支比率とは、「財政構造の弾力性を示す指標」と説明されますが、これがわかりにくい。簡単にいうと、生活に必要な経費が家計全体の何%かを表しています。

館山市は、94.7%です。つまり、自由に使える収入である市税と地方交付税を合わせた108億円のうち約95%の使い道が最初から決まっているということです。

逆に言えば、5%しか、新しいことに使えない。例えば、家計でいったら電化製品を買うとか旅行に行くなど自由に使えるお金が5%しかないわけです。

ここで単純化すると「5億円」です。5億円といえば一般家計からすれば多いように見えます。

しかし、仮に269億円を269万円と単位を変え2倍にし、年収538万円の一般家庭で想定すると、年間「10万円」しか新しいことに使えない状況・・・というわけです。

年間10万円しかなかったら、皆さん何に使いますか?

どれほど今の財政が厳しい状況かがわかると思います。

ちなみに経常収支比率は、その昔は70~80%が健全とされてきましたが、現在は地方自治体の負担も増え、90%以上は珍しいことではありません。千葉県の平均は93.5%ということです。

広報「だん暖たてやま」2024年10月号5ページ

借金はR5年度決算で大きく膨れ上がり、将来負担率は、51%に大きく上がっています。財政健全化の基準であるという350%には達していないので、今すぐに「財政破綻?」という危機ではありません。

しかし、これからも高齢化率は高まる中、多くの老朽化した公共施設の再編も待っています。何を削って、何を残すのか、まさしく選択と集中が迫られています。