
会派「市民クラブ」で2月19日、徳島県阿南市を訪問し、新庁舎建設と公共施設マネジメントについて行政視察を行いました。
館山市でも庁舎の老朽化が進み、将来的な建替えや公共施設再編の議論は避けて通れない課題となっています。今回の視察では、「これからの時代の市役所はどうあるべきか」という視点で、多くの学びを得ることができました。
正直、2万人程度の人口規模の違いにもかかわらず、館山市との違いが大きすぎて、言葉になりませんでした・・・。
お忙しい中ご対応いただいた幸坂議長はじめ、職員の皆様誠にありがとうございました。
なぜ新庁舎が必要だったのか

阿南市の旧庁舎は1966年(昭和41年)に建設されたもので、長年行政を支えてきましたが、
- 耐震性能の不足
- バリアフリー未対応
- 庁舎機能の分散
- 防災拠点としての脆弱性
といった課題が顕在化していました。
特に南海トラフ巨大地震が想定される地域であることから、「災害時にも行政機能を止めない拠点」が必要となり、新庁舎整備へとつながりました。
新庁舎は平成25年に着工し、平成29年に完成。
延床面積約2万㎡、総事業費は約88億5,000万円で、基金と合併特例債を組み合わせることで一般財源の負担を抑えています。
物価高騰が進んだ現在に置き換えると、約120億円相当になるそうで、額だけでいうと館山市の財政では参考にならないレベルです。
ただし、印象的だったのは、「建てたいから建てた」のではなく、防災・行政改革・市民サービス改革が一体となった結果として庁舎整備があったという点でした。
市民・議会・行政をつなぐ空間設計

新庁舎の中心には「ANANフォーラム」と呼ばれる大きな吹き抜け空間があります。思わず「わぁ〜」と言葉が漏れてしまいました。まるで美術館やホテルのようです。
ここは単なるロビーではなく、市民・議会・行政が交わる象徴的な空間として設計されています。
庁舎の基本理念は次の7点です。
- 市民・議会・行政が連携する拠点
- 環境に配慮した庁舎
- ユニバーサルデザイン
- ワンストップ行政サービス
- 柔軟で維持管理しやすい施設
- 市民に開かれた庁舎
- 災害に強い防災拠点
「市役所は手続きの場所」という従来の考え方から、「市民活動の拠点」へと発想が転換されていました。
来庁者目線で設計された行政サービス

庁舎では、市民が迷わない仕組みが徹底されています。
- 窓口を1・2階に集約
- ワンストップ対応
- フロアマネージャー配置
- 番号呼出方式によるプライバシー配慮
さらに広告事業を活用した案内システムを導入し、維持管理費の削減と歳入確保を両立していました。

行政サービスの改善が「建物の設計段階から考えられている」点は非常に参考になりました。
環境にも配慮した次世代庁舎

阿南市庁舎は省CO₂モデル庁舎として整備されています。
- 太陽光発電(最大100kW)
- 自然採光・自然換気
- LED照明
- パッシブデザイン
これにより、延床面積が増えたにもかかわらず、㎡あたり光熱費は旧庁舎より約36%削減されています。
「環境配慮=コスト増」ではなく、長期的な維持管理コスト削減につながる設計でした。
災害時も止まらない市役所
防災面では、南海トラフ地震を想定した徹底的な対策が取られています。
- 免震構造(揺れを1/4〜1/5に低減)
- 津波対策の地盤嵩上げ
- 防潮板設置
- 72時間稼働の非常用電源
- 30t貯水槽
- 備蓄倉庫
「災害時こそ市役所が機能し続ける」という考え方が設計の中心にありました。
市役所を“市民の共有財産”へ

今回の視察で最も印象的だったのはここです。
阿南市では庁舎を行政施設ではなく「市民の共有財産」と位置付けています。
庁舎では、
- マーケットイベント
- コンサート
- 民間事業者の物販
- 市民交流活動
などが日常的に行われています。
導入もいきなりではなく、
- サウンディング調査
- 試行利用(トライアル)
- 民間提案制度
という段階を踏み、市民・事業者・行政の三方良しの運営モデルを築いていました。
館山市への示唆
阿南市の取組から感じたのは、
庁舎建設とは「建物の話」ではなく「自治体経営の再設計」であるということです。

建設当初は「高すぎる」という声もあったそうですが、市民利用を進めることで評価が変わり、今では市民の誇りとなる施設になっています。
館山市でも今後、
- 防災拠点としての機能
- 市民利用型庁舎
- 公共施設マネジメントとの統合
- 長期財政戦略
を同時に考える必要があります。
人口減少時代における庁舎とは、単なる行政の建物ではなく、地域の活動基盤そのものであるべきです。
阿南市の事例は、これからの自治体のあり方を考える上で非常に示唆に富むものでした。