
第3回議会改革特別委員会では、事前に「館山市の実情と議会の現状」と題して、個々の議員で意見をまとめてくることになりました。私が提出した内容を公開します。
館山市の実情と市政の現状
館山市が直面している喫緊の課題は、少子高齢化の急速な進行とそれに伴う地域の活力低下、そして慢性的かつ深刻な財政的な厳しさです。これらの要因は相互に関連し、市政運営に大きな制約を与え、行政サービスの維持・向上を困難にしています。
1. 少子高齢化に伴う地域の活力低下
人口構造の変化: 近年、館山市では若年層の流出と高齢化が加速しており、生産年齢人口の減少が顕著です。これにより、地域経済を支える労働力や担い手が不足し、産業の衰退や商店街の空洞化といった問題が生じています。
地域コミュニティの希薄化: 高齢化が進む一方で、地域活動の担い手が減少しており、伝統的な行事の維持や自治会活動の継続が困難になるケースが見られます。これにより、地域コミュニティの活力が低下し、住民同士のつながりも希薄になる傾向にあります。
多様な行政ニーズの増加: 高齢者医療費や介護費用など、高齢化に伴う社会保障関連経費が増大しています。一方で、少子化により子育て支援や教育に関するニーズも複雑化しており、限られた財源の中で多様な行政ニーズに応えることが難しくなっています。
2. 財政的な厳しさによる行政の縮小
税収の低迷: 人口減少や産業の低迷により、市税収入が伸び悩み、市の財政基盤は脆弱な状態にあります。特に、企業誘致の難しさや既存事業所の活力低下が、税収の増加を阻む大きな要因となっています。
扶助費等の増加: 少子高齢化の進行と医療・介護制度の拡充に伴い、社会保障関連経費(扶助費など)が年々増加しており、市の財政を圧迫しています。これは、歳出構造を硬直化させ、他の分野への投資を困難にしています。
新規事業や老朽化対策への制約: 限られた財源のなかで、新たな市民ニーズに対応するための新規事業の実施や、老朽化が進む公共施設の維持補修・更新といった喫緊の課題への対応が後手に回っています。結果として、市民サービスの質を維持すること自体が難しい局面を迎えています。
行政サービスの効率化・再編の必要性: 財政的な制約から、既存の行政サービスについても、そのあり方を根本から見直し、より効率的・効果的な提供方法を模索したり、場合によってはサービスの縮小や廃止も検討したりせざるを得ない状況にあります。
これらの現状を踏まえ、議会改革特別委員会における議員定数の議論は、単なる数合わせではなく、限られた資源の中でいかに市民の幸福と持続可能な市政を実現していくかという、より大きな視点で行われるべきであると考えられます。
館山市の現状と議員定数
1. 人口減少と財政状況
- 人口: 約43,000人(2025年6月現在)。近年、減少傾向が顕著であり、少子高齢化が進んでいます。
- 財政: 厳しい財政状況が続いており、限られた財源のなかで市民サービスの維持・向上を図る必要があります。
2. 現行の議員定数と市民の声
- 議員定数: 現在18名
- 市民の声: 多くの市民が、人口規模に対して議員数が過剰ではないかとの意見を持っています。これは、議員報酬をはじめとする議会経費が市民の税金で賄われており、その成果が見えにくいことに対する疑念から生まれていると考えられます。
3. 他自治体との比較(参考)
自治体名 | 人口(概算) | 議員定数 | 備考 |
千葉県内の他市 | 40,000人~50,000人台 | 16人~18人 | 各市の状況により変動 |
全国平均 | 50,000人未満 | 16.8人 | 全国市議会議長会調査資料 |
4. 議員定数削減のメリット・デメリット
4.1. メリット
- 経費削減: 議員報酬や活動費などの削減により、市の財政負担を軽減できます。削減された財源を市民サービスや喫緊の課題解決に充てることが可能です。
- 効率的な議会運営: 議員数が減ることで、議論の収斂が早まり、意思決定の迅速化が期待できる可能性があります。
- 市政への関心向上: 選挙の競争が激化することで、より資質の高い候補者が立候補し、市民の市政への関心が高まる可能性があります。
4.2. デメリット
- 市民の声の反映: 議員数が減ることで、多様な市民の声や地域の課題を十分に吸い上げることが難しくなる可能性があります。特に、特定の地域や層の声が届きにくくなる懸念も考えられます。
- 専門性の確保: 議員一人あたりの担当分野が増え、専門的な知識や知見を必要とする政策審議において、十分な議論が難しくなる可能性があります。
- 行政監視機能の低下: 議員数が少ないと、行政に対する監視機能が弱まり、チェック機能が十分に働かなくなる懸念があります。
- 委員会運営への影響: 常任委員会などの構成に影響が出ることが考えられます
5. 議員定数改正の経緯
<館山市の過去の定数推移。>
- 昭和57年(人口56,000人):28人
- 平成6年(人口54,000人):25人
- 平成17年(人口51,000人):20人
- 平成22年(人口49,000人):18人
- 現在(令和7年、人口43,000人):18人
この推移を見ると、人口が約6,000人減少した平成22年以降も、議員定数は18人で維持されています。この間、議員一人当たりの人口は減少していることになります。
- 平成22年:49,000人 ÷ 18人 = 2,722人/議員
- 令和7年:43,000人 ÷ 18人 = 2,389人/議員
市民の声として「2、3人は削減すべきではないか」という意見があるのは、この人口減少にもかかわらず定数が据え置かれている点や、経費削減への期待が背景にあると考えられます。
6. 適正議員数の検討における視点
適正な議員数を検討する上で、以下の視点を取り入れることが重要です。
- 人口一人あたりの議員数: これまでの削減ペースを考慮すると、現在の2,389人/議員という数字をどう評価するか。例えば、過去の人口と定数の比率を参考に、将来的な人口減少も見据えて試算する。
- 仮に、現在の人口43,000人に対して、平成22年当時の人口一人あたりの議員数2,722人を維持するとした場合、43,000÷2,722=15.8人となり、16人程度が目安となります。
- 2人削減であれば16人、3人削減であれば15人となります。

私の考え
1. 議会の役割の深化:市民福祉向上のための政策立案機能強化
少子高齢化と財政難という、私たちの市が直面する喫緊の課題に対し、議会が市民福祉向上にどう貢献すべきか、今こそ真剣に向き合うべき時代を迎えています。これまでの議会は、執行部の監視という重要な役割を担ってきました。この機能はもちろん不可欠ですが、現状のような厳しい局面においては、それだけでは十分とは言えません。
これからは、市民の皆さんの声をこれまで以上に深く把握し、それを市政に反映させるだけでなく、議会自らが具体的な政策を立案し、その実現に向けて積極的に取り組むべきです。市民の皆さんの日々の困りごとや多様化する地域課題を吸い上げ、それらを解決するための具体的な施策を議会として提言していくことで、より実効性のある形で市民福祉の向上に貢献できると考えます。
2. 行財政改革における議会の役割:議員定数削減と財源の有効活用
執行部が財政の健全化を目指し、組織改編を含めた行財政改革を推し進めている現状は、私たち議会もまた、改革の必要性に直面していることを示しています。執行部が「窮地」に立たされているのであれば、議会もまた、その状況を共有し、改革に協力する姿勢を示すべきです。
その具体的な方策の一つとして、人口規模に合わせた議員定数削減を含めた議会自身の改革を進めることは避けられないと考えます。
3. 地域課題解決への新たなアプローチ:議会による中間支援機能の強化
従来、議員定数が多かった時代は、各地区から議員が輩出され、それぞれの地域課題解決を担ってきたと思います。しかし、現在の議員定数18人では、すでに地域によっては議員が不在となる状況も生じており、きめ細やかな地域課題への対応が難しくなっています。
そこで、議会が改めて地区ごとの課題を体系的に収集し、その要望を執行部に橋渡しする役割を強化すべきです。さらに、市民が主体的に地域課題に取り組む「市民協働」をより一層活発化させるため、議会がその「中間支援」の役割を果たすべきだと考えます。議会が市民と行政のハブとなり、市民活動を後押しすることで、地域の活力を引き出し、課題解決に繋げていくことが可能です。
4. (提案)議員定数削減による財源を、政策立案機能を強化する基金へ
議員定数は単なる削減で終わらせるのではなく、削減によって生じる財源を、議会の政策立案機能の強化に資する新たな財源として有効活用する道筋を示すべきです。
具体的には、議員定数削減によって得られる財源の一部を、毎年度基金として積み立てることを提案します。この基金は、以下のような事業に特化して活用されるべきです。
- 常任委員会(または特別委員会)が毎年度テーマを掲げ、市民の声を聞いて要望する事業
- 行政と市民が協働で進めるプロジェクトの支援
議会としては、この基金の設置を条例で定め、基金への積立を要望します。そして、毎年度の予算審議において市民の声を反映した具体的な事業を政策提言として執行部に提出し、最終的な事業の実施は執行部の判断に委ねつつも、その進捗を厳しくチェックしていきます。 この取り組みを通じて、議会改革が具体的な市民福祉の向上に繋がり、市民の皆さんと議会との信頼関係を一層深めていくことができると考えます。
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