
館山市の未来をつくる「関係人口」と「新しい教育環境」について12月議会にて一般質問を行いました。今回のテーマは大きく二つです。
- 関係人口の可視化と戦略性のある人口政策
- 小規模特認校と学びの多様化学校の今後の方針
どちらも、これからの館山市の将来像にかかわる重要なテーマです。この記事では、当日の議論をできるだけわかりやすい形で整理して共有します。
質問の趣旨は、こちらにまとめました。
当日の動画はこちらからご覧いただけます。
1. 関係人口とは何か
都市一極集中や人口減少の打開策、そして災害からの復興においても“地域外の担い手”の重要性があらためて注目されたこもあり、国は「地方創生2.0の基本構想」にて関係人口の可視化を明記しました。
関係人口とは、
- 観光客でもなく
- 移住者でもなく
- でも継続的に地域とかかわっている人々
を指します。
例えば、
- 館山出身で都市部に住んでいる人
- 祭礼や地域活動に合わせて帰ってくる人
- サーフィンやレジャーで定期的に訪れる人
- ワーケーションで滞在する人
- ふるさと納税で継続的に応援してくれる人
などです。
館山・南房総には、この「関係人口」の対象になりうる人たちが、実は数多く存在していると推測します。
2. 人はどのように「移住」するのか
全国的に見ると、首都圏の移住希望者は約300万人いるとされていますが、そのうち 実際に移住を具体的に検討している層は約3%、10万人にも満たない というアンケート結果があります。
この数字を見ると、従来の移住政策の構造が浮かび上がってきます。
つまり、多くの自治体が「すでに移住を決めかけている少ない層」を対象に、移住相談窓口や支援制度といった“サービス合戦”を繰り広げている、という構図です。
もちろん、移住の窓口は重要ですし、移住支援があるに越したことはありません。
しかし、私自身も移住者として振り返ると、「自治体の移住支援が移住の決定打になったか」と言われれば、正直かなり疑問です。
実際の移住のプロセスは、もっと別の形をしています。
まず何らかのきっかけがあり、移住への思いが徐々に具体化する。その上で現地を訪れ、自分の目で見て、空気を感じ、人と会う。そして最後に、「支援があるかどうか」が背中を押す要素になる。
多くの場合、この順番ではないでしょうか。
さらに言えば、人は「移住しよう」という観念で人生を動かしているわけではありません。人生の転機はもっと突発的で、流動的で、どこか冒険に満ちたものです。
私の経験上、移住を決める最大の要因は、圧倒的に 「人」 です。
外から眺めているだけでは分からないローカルの魅力を伝えるのは、自然そのものではありません。それを語り、体現し、つないでくれる 人の存在 です。
人が媒介となって、自然や文化、食、時間の流れ方といった要素が立体的に伝わる。その積み重ねの先に、観光では決して見えない「深いローカル」へと、人は誘われていきます。
私の周りにいる移住者仲間を見ても、そこには十人十色の移住に至る物語があります。これを政策で一律に設計し、誘導しようとすること自体、無理があるのかもしれません。
だからこそ重要なのは、その土地の魅力を伝える人や活動と、地域に関心を持つ人を、いかに自然にマッチングさせるか。
突き詰めれば、移住政策の核心は、この一点に尽きると私は考えています。
3. なぜ今、「関係人口の可視化」が必要なのか
国土交通省が今年6月に発表した関係人口の実態調査によると、
「首都圏の18.4%、約300万人が地域と継続的な関わりを持つ関係人口である」とされています。
この数字は、首都圏における移住希望者数と非常に近い規模であり、両者が連続した関係にあることを示唆しています。
考えてみれば、誰もが突然、何の前触れもなく移住を決断するわけではありません。
そこには、さまざまな出会いや経験、気づきがあり、その積み重ねの先に、結果として「移住」という選択が現れるだけです。
そう考えると、移住には明確な「前段階のプロセス」が存在します。そしてその多くは、まさに 関係人口と呼ばれる人々の営み と重なっています。
「関係人口」は新しい概念なのか
「関係人口」という言葉自体は、この10年ほどで一般化してきましたが、移住支援に関わってきた人たちからすれば、「いまさら感」があるのも事実でしょう。
これまでも、
- 二拠点居住
- 通い型の地域参加
- 地域活動への継続的関与
といった形は、実態として存在していました。
ではなぜ今、あらためて 「関係人口の可視化」 が強く問われているのでしょうか。
背景にある、日本全体の構造変化
一つは、場所を選ばない働き方が少しずつ現実のものとなりつつあること。
そしてもう一つは、日本の総人口が減少局面に入り、超人手不足社会が避けられない状況になっている ことです。
もはや、
- 出生率の回復を待つ
- 移住者数の増加だけに期待する
といった戦略では、地方は維持できません。
移住を具体的に検討している「少ないパイ」を奪い合う構図のままでは、日本の地方は持ちこたえられないのです。
地方が維持できなければ、日本全体の衰退が加速することは、さまざまなシナリオで示されています。
関係人口は「国土を守る最後の砦」
出生率の改善が見通せず、移住施策の成果にも限界が見えてきた今関係人口の創出と可視化は、国土を維持するための「最後の砦」と言っても過言ではないのではないでしょうか。
重要なのは、
「見えていないだけで、地方に関心を持つ人は非常に多い」
という事実です。
館山には、関係人口を受け止める力がある
館山は、
- 海と自然
- レジャー環境
- 教育の選択肢
- 食文化
- 祭礼や伝統
- そして何より「人」の魅力
といった、多様な 関係人口の受け皿資源 を持つ地域です。
これらを点ではなく面として整理し、可視化し、発信していくことができれば、新たな関係人口は確実に増えていきます。
そしてその延長線上にこそ、移住や定住という「結果」が自然に生まれてくるのだと思います。
4. 国の新制度「ふるさと住民登録制度」が始まる可能性
地方創生2.0では、関係人口を可視化する仕組みとして、
「ふるさと住民登録制度」
が明記されました。国は今後10年で、
- 実人数 1000万人
- 延べ人数 1億人
の関係人口の登録を目指すとしています。
将来的には、住民税の分割納税や、関係人口数を交付税に反映する可能性も議論されています。
館山市としても、この動きを注視しつつ、主体的に制度設計を検討していく必要があると感じています。
5. 私から議会で提案した三つのアクション
私は以下の三つを提案しました。
(1) 関係人口を生み出している団体・個人の“見える化”
祭礼、スポーツイベント、文化活動、移住体験、クラフト、地域コミュニティなど、館山には多様な活動が存在します。まずはこれを整理して可視化することが重要です。
(2) それらを横断的につなぐ「協議の場」の創設
バラバラに動いている活動をつなぐだけで、新しい価値やメディア的発信力が生まれます。
(3) 将来の「関係人口登録制度」への備え
国の制度化が進んだときに、館山市としてどう活用するかを検討する必要があります。
市長からは、まず 団体の可視化から取り組む という前向きな答弁をいただきました。
6. 教育 ― 小規模特認校と学びの多様化学校の意義
後半は教育の質問でした。館山では来年度、二つの小規模特認校が開校します。また、令和9年度には学びの多様化学校の開校を目指しています。
これは、「どんな子にも合う学びの場がある」という、非常に大きな強みです。
7. 小規模特認校の三つの教育コンセプト
教育長から示された基本方針は以下の通りです。
- 自然を生かした体験・探究学習の推進
- 児童が主体的に学び進める自由進度学習
- 市内全域から通学できる仕組み
特筆したいのは、これらが“現場の先生方の主体的な提案”から生まれたという点です。館山市の教育の底力を感じる部分でした。
8. 申請状況
今年の申請状況は以下の通りです。
- 房南本校:6件
- 神余分校:0件
教育委員会の評価としては、開校前のこの時期において、必要性を実感しているとのお話でしたが、岡山県美作市の事例のように「学校側から積極的に説明しに行く姿勢が不可欠」であると指摘しました。
また、房南本校、神余分校は自然豊かな伝統ある地域との点は共通していますが、学校と地域の関係や風土の特色は大きく異なります。この魅力を丁寧に伝えていただきたいと思います。
9. 学びの多様化学校 ― 不登校児童生徒の新しい選択肢
全国的に不登校は35万人を超え、中学生は6.8%に達しています。
館山でも学びの多様化学校の整備が急務です。
検討委員会で示された方針は以下の通りです。
- 館山市には学びの多様化学校が「必要」
- 対象は小〜中学生すべて
- 独立型の学校として整備
- 場所は旧豊房小を活用
- 令和9年4月開校を目指す
私は特に、
- 心理士の常駐体制
- 作業療法士(OT)による支援
の重要性を強く提案しました。
教育長からは、県への要望と、市内支援機関との連携強化、OT常駐の検討を進めるとの答弁をいただきました。
10. 県内唯一「3つの学校類型が揃うまち」に
館山市には、今後以下の三つすべてが揃います。教育長の答弁によると、これは県内唯一の自治体とのことです。
- 標準規模校
- 小規模特認校
- 学びの多様化学校
これは、子育て世代にとって大きな魅力であり、移住促進にも確実につながる強みです。
教育は人口政策そのものです。これから始まる新しい館山市の教育にぜひ多くの人が注目し、応援していきましょう。
最後になりますが、今回石井浩己教育長が、非常に思いのこもった答弁をしてくださいました。10分間、何の資料も読まずに、自らの言葉で新しい本市の教育について語ったいただきました。YouTubeを編集しましたので、ぜひご覧ください。