
12月議会において、館山市の組織再編に関する条例改正が議決されました。委員会報告では、年間2,000万〜2,500万円程度の財政削減効果が示されましたが、それだけでは今回の組織再編の本質は伝わりません。
この再編は、単なる経費削減ではなく、市役所が今後も行政サービスを維持し続けるための構造改革であり、この1年を通じて進められてきた大きな取り組みでしたので、説明を加えます。
今回議決された組織再編の内容
今回の条例改正で決まった主な内容は、次の通りです。
- 現在の総合政策部と総務部を統合し、新たに「総務企画部」を創設
- 税務・環境衛生など、市民生活全般を担う機能を市民生活部に集約
- 教育委員会にあったこども課を市長部局(健康福祉部)へ移管
- 経済観光部と建設環境部の一部を統合し、新たに「建設経済部」を創設
これにより、政策立案から現場対応までの流れを整理し、部門間の連携を強めることが狙いとされています。
見えにくいが重要なポイント
今回の組織再編は、条例上は「部の再編」として整理されていますが、実際にはそれにとどまらない、全庁的かつ構造的な改革です。
市の説明によれば、今回の再編の背景には、
- 若手職員が多く、中堅層が薄いという人員構成の歪み
- 自己都合退職や病気休職の増加
- 管理職が実務を兼ねざるを得ない慢性的な人手不足
といった、このままでは市役所の機能が立ち行かなくなるという強い危機感があります。
そのため今回の再編では、
- 管理監督職を減らし、実務を担う職員を相対的に厚くする
- 1〜2人体制の小規模な係を統合し、属人化を防ぐ
- 係長・課長・部長それぞれの役割を整理し、マネジメントと実務を分ける
といった、係レベルまで踏み込んだ組織の組み替えが同時に行われています。
また、この改革の進め方そのものも重要です。
今回の組織再編は、一部の幹部だけで決められたものではありません。
- 一般職、係長、課長、部長との段階的な意見交換
- 全職員アンケートの実施
- 部長会・三役協議を通じた全庁的な合意形成
を重ねながら、職員自らが「このままではいけない」と考え、提案を積み上げてきた改革です。
私は、この点を非常に高く評価しています。
それほど館山市職員の現場力と問題意識は高く、
持続可能なまちづくりに向けて、先手を打って動いてくださった結果が、今回の組織再編だと受け止めています。
私が懸念している点
一方で、議員として懸念している点もあります。
それは、市の最上位計画である総合計画との整合性です。
総合計画では、
- 産業・経済
- 福祉・子育て・健康・予防・医療
- 教育・文化
- 都市整備・環境・防災・安全
- 市民参画・シティプロモーション
が基本目標に掲げられています。
今回の組織再編によって、これらの重要分野が十分に機能するのか。この点は、丁寧に検証していく必要があります。
執行部の考え方と、今後の視点
執行部の説明では、
- 総合計画は「長期的な指針」
- 組織再編は「短期的に運用し、必要に応じて修正するもの」
という整理がなされました。
つまり今回の再編は、完成形を固定するものではなく、
実際に動かしながら改善していく前提で進められています。
人口減少と人手不足が進む中では、
一度決めた組織を長年変えないこと自体がリスクになり得ます。
だからこそ今後は、
- 重要政策分野に支障が出ていないか
- 市民サービスの質が保たれているか
- 職員がさらに疲弊していないか
を、注意深く見守り、必要な修正を求めていくことが重要だと考えています。
今回の組織再編はゴールではなく、
持続可能な市役所をつくるためのスタートラインです。