
人口減少時代、自治体は単独で生き残れるのか
徳島県美波町に続き、会派「市民クラブ」で2月19日、阿南市を訪問し、定住自立圏構想と広域行政の取組について行政視察を行いました。
今回の視察テーマは、これからの地方自治体にとって避けて通れない課題です。人口が減り続ける時代に、自治体は単独で行政サービスを維持できるのか。館山市でも南房総市などとの広域連携のあり方が大きな政策課題となる中、非常に示唆に富む視察となりました。
お忙しい中ご対応いただいた幸坂議長はじめ、職員の皆様誠にありがとうございました。

定住自立圏とは何か
阿南市は徳島県南部の中心都市として周辺町村と生活圏を形成しています。人口減少と少子高齢化が進む中、市町村の枠を越えた行政連携を進めるため、平成24年度から1市2町による定住自立圏の取組を開始しました。
現在は南阿波定住自立圏として再編され、共生ビジョンに基づき広域施策が展開されています。
特徴的なのは、単なる協定ではなく、生活機能の維持、地域経済の活性化、行政運営の効率化を圏域全体で担うという発想で進められている点です。
広域連携は生活を守る政策
阿南市の取組は大きく三つの分野で構成されています。
生活機能の強化
医療体制、教育、産業振興、防災など、単独自治体では維持が難しくなりつつある分野を共同で支える仕組みです。
特に印象的だったのが医療分野です。地域では医師不足が深刻であり、徳島大学と連携した寄附講座を設け、医師育成や派遣体制の構築を進めています。
大学、自治体、医療機関が一体となり地域医療を支えるモデルでした。
ネットワークの強化(交通・観光)
人口減少と運転手不足により公共交通の維持は全国共通の課題となっています。
阿南圏域ではデマンド交通、ボランティアタクシー、自動運転実証、JRとバスの連携制度など、多層的な交通ネットワークづくりが進められていました。
隣接地域では線路と道路の両方を走る世界初の!DMVが運行されており、鉄道を地域インフラとして守る政策として位置づけている点も印象的でした。

観光分野では自治体単位ではなく圏域全体を一つの観光エリアとして捉え、広域DMOによる戦略が展開されています。
マネジメント能力の強化
広域連携は制度だけでは機能しません。阿南市では職員交流や人材育成、協議会運営など、人と人との連携を重視していました。
広域行政の本質は制度設計よりも関係性づくりにあると感じました。
印象的だった率直な自己評価
今回の視察で最も印象に残ったのは、成功事例としてではなく課題を正直に語っていた点です。
阿南市が挙げた主な課題は、定住自立圏と広域行政の役割の重複、住民認知度の低さ、中心市の財政負担、効果の見えにくさなどでした。
担当者からは、定住自立圏と広域行政の明確な使い分けはできていないという説明もありました。
これは多くの自治体が直面している現実でもあります。
これからの自治体は圏域で考える時代へ
阿南市が示していた今後の方向性は、DXによる行政共同化、子育てや移住支援の連携、コンパクトとネットワークを組み合わせた都市構造、自治体間の目的共有でした。
広域行政の鍵は自治体と住民が目的を共有することだと強調されていました。
館山への示唆
今回の視察を通じて感じたのは、定住自立圏構想は制度そのものが目的ではなく、単独では維持できない行政機能をどのように補完するかという問いへの実践であるという点です。
館山市においても今後、定住自立圏を深化させるのか、より実務的な広域行政へ進むのかという判断が現実的な議論になっていくでしょう。
人口減少時代の自治体経営は、単独完結型から圏域経営型へと転換していく必要があります。そのためには行政だけでなく議会側も広域視点を持つことが不可欠であると強く感じた視察でした。