
会派市民クラブの行政視察で徳島県美波町を2月18日に訪れ、全国的に注目されているサテライトオフィス事業について学んできました。
人口約5,500人、高齢化率約49%。
人口減少が進む小さな町ですが、現在この地域には30社を超える企業が進出し、徳島県内最大のサテライトオフィス集積地となっています。
なぜ、この町に企業が集まったのでしょうか。

成功の出発点は「県のインフラ整備」にあった
まず理解しておくべきなのは、この取組は町単独で突然始まったものではないという点です。
徳島県では早い時期から、
- 高速ブロードバンド網の整備
- ケーブルテレビ網の全県的普及(普及率91.1%)
といった通信インフラ整備が進められていました。
地方でありながら都市部と同等の通信環境が整っていたことが、IT企業にとって大きな前提条件となりました。
つまり、美波町の成功は
「デジタルインフラ整備 → 企業誘致」
という県レベルの長期政策の上に成り立っています。
工場を呼ぶのではなく「働き方」を呼び込む
美波町は平地が少なく、大規模工場の誘致が難しい地域です。そこで町は発想を転換しました。
「土地を必要としない企業を呼ぼう」
2011年に徳島県が開始したサテライトオフィス政策を契機に、IT企業などの分散型拠点誘致へ政策転換を図ります。
しかし目指したのは企業数ではありません。
- 地域課題を共に考える企業
- 地域と関係を築く企業
- 長期的に関わる企業
を選ぶという方針でした。

成功の本質は“官民の通訳者”
美波町では民間企業「株式会社あわえ」が中核支援事業者として関わっています。
行政が制度と環境を整え、民間が企業と地域をつなぐ。
行政では紹介しにくい地域の人や活動を民間が“翻訳”することで、企業が地域に入りやすくなっていました。
創業者自身が美波町出身で、進出企業側だったことも特徴です。単なる営利目的ではなく、故郷への貢献という熱い想いが込められていたことでしょう。
空き家・空き店舗がオフィスに

新規施設を建設するのではなく、
- 古民家
- 空き家・空き店舗
- 旧公共施設
を改修して拠点化。
さらに宿泊可能な滞在型施設を整備することで、企業が地域に「滞在」する仕組みをつくっていました。
企業が地域の一員になる
防災アプリ開発、職業体験、地域イベントなど、企業が地域活動に関わることで関係人口が生まれています。
実は「広域連携モデル」だった
県南1市4町による「みなみ阿波若者創生協議会」が、企業定着や移住促進を広域で支援しています。
成功は町単独ではなく、地域圏としての戦略でした。
館山・南房総への示唆
サテライトオフィスは企業誘致ではなく、地域経営戦略。
南房総も安房3市1町という一体の地域として考える必要性を強く感じました。
「あわえ」という名前に込められた意味

「あわえ」は、阿波からきていると思ったら、さにあらず。
“細い道”を意味する方言だそうです。
この名には、メインストリートではない場所(地方・田舎)に新しい価値や流れを生み出す、という思いが込められているそうです。その思想が、この取組の象徴だと感じました。
ご多用の中ご対応いただいた磯野副町長、片山副議長、小部委員長、株式会社あわえの遊亀取締役(町議会議員)はじめ町職員の皆様、誠にありがとうございました。