昨日(5月4日)のことですが、房日新聞の本間裕二常務にお誘いいただいて、市の未来をいくつかのシナリオに分けて対策を考える「シナリオ・プランニング」という手法を学びました。
講師は、建築家で公共R不動産研究員の岸田一輝さん。岸田さんは市内に事務所を構えて館山市ではまちづくりの研究活動も。8年前に無印良品のローカルニッポンでも記事を書かせていただいたことがあります。
https://localnippon.muji.com/508/
シナリオ・プランニングという手法は第二次世界大戦中に米空軍の戦略で生まれたそうです。敵地に乗り込む際、現地の状況は不確定なことが多いため、いくつかのシナリオを想定して向かい、即応体制を取ったとのこと。
これをまちづくりに置き換えると、IT技術の急速な進歩、ライフスタイルやニーズの変化など不確定な因子が多い昨今、事前にシナリオを描くことで他地域よりもいち早く対策を取って地域を維持・発展させる可能性を秘めているそうです。
まずはざっと概要を教わった後、今後10年で起きそうな要因をブレインストーミングで出し合いました。
次に、不確実性が高いか低いか、まちへの影響が高いか弱いかで要因をグラフに落とし込みます。
興味深いのが、このグラフの「不確実性が低く」「まちへの影響が大きい」枠に入る要因がどのシナリオにも通底する背景となり、「不確実性が高く」「まちへの影響が大きい」枠に入る要因が、シナリオを構築する要因になるということ。
ここでは時間もないので感覚値で落とし込みましたが、各要因ごとにデータの裏付けをとると、より正確なグラフになるようです。
その上で、不確実性が高く、まちへの影響が大きい要因の2つをピックアップして、表をつくると、4つのシナリオが生まれました。
今回は、中心市街地を対象としたため「市街地の人口(子育て世帯)増減」と「市民の所得増減」の2軸を掛け合わせることで、
A:勝ち組館山
B:ネガティブなコンパクトシティ
C:ドーナツ化
D:失われた館山
の4つのシナリオを仮に想定しました。
Aは、想定されているよりも人口が増えて、所得も増える館山像。この場合、維持発展させるためには、エネルギーの自給や環境への再投資ができて最高です。
Bは、不便さが高まり郊外から市街地に人口(特に高齢者)が集まるシナリオ。計画的なことではありませんが、人口減少に合わせたコンパクトな市の再設計を行う必要があります。
Cは、館山の自然を生かした一次産業、観光産業が成長するも市街地から人口が流出するシナリオ。Bとも同様ですが、高齢者福祉のサービスに重点を置いて、「高齢者パラダイス」という方向性もあります。
Dは、想定以上に衰退が早まった館山。人口は2万人まで減少し、中心市街地にも5000人ほどしか人がいません。地元の事業は成り立たず地元館山のプライドは虚しく消えます。一方、こうなったら外資を有効活用して新たな館山をつくるしかない。
そのそれぞれに、自営業者、雇用者、高齢者、子育て世代、青年、子ども、市の7人を想定して、各々がどう感じているかを一言で表現することもポイント。これによって住む人のリアルをつかんでいきます。
今回は時間もなかったので、要因の根拠を精査させずざっくりとした内容で終わりましたが、とにかく考え方を学べてよかったです。都内から渋滞に巻き込まれて4時間かけて笑、きてくださった岸田さん家族に感謝。
本日(こどもの日)の房日新聞に安房4市町の14歳以下の子どもの人口が1万人を切ったという記事が出ていました。令和4年度の館山の出生数は196人だということです。
https://bonichi.com/2023/05/05/383224/
子育て支援で結果が出た自治体もありますが、福祉大国の北欧でも出生率が改善しないという現実もあります。今後、地方自治体はどうなっていくのか、真剣に考えるほど不安が募ります。
一方で、各人が抱く感覚的な未来像とは別に(これも尊重されるべきですが)、誰もが拠り所にできるデータを共有することで、自ずと戦略は見えてくるのかなと思います。そうしたことを意識できた有意義な勉強会でした。
今後も、こうした会は継続していく予定です。