9月勉強会は、地方創生の成功事例として紹介される徳島県神山町についての本が課題図書でした。
https://note.com/ppp_tateyama/n/n50d7f2ce796b
神山町の人口は5000人なので、鋸南町よりも小さなまち。かなり前から取り組みが注目されていましたが2022年、約200人の学生が学ぶ「神山まるごと高専」が誕生しました。その背景やさまざまなプロジェクトがまとまった大変読みやすい本です。
神山まるごと高専
なぜ神山町が地方創生の聖地になったのか?私なりに骨格のみ抜き出すと以下のような流れになります。
・2004年:NPO法人グリーンバレー設立
・2005年:町主導で光ファイバー網全戸設置→サテライトオフィス誘致
・2010年:サテライトオフィス第1号開設(Sansan「神山ラボ」)
・2014年:消滅可能性都市20番目に(日本創生会議レポート)
・2015年:神山町創生戦略策定
・2016年:神山町とグリーンバレーで「神山つなぐ公社」設立
さまざまな民間主導の取り組みが加速
・2022年:神山まるごと高専開校
まずは、グリーンバレーを創設した大南信也さん。建設会社を営む家の出で、米国スタンフォード大学院修了ととんでもない経歴ですが、地元に帰って「住民主導のまちづくり」をスタートさせました。アーティスト・イン・レジデンツの先駆者です。
日経BP記事
https://project.nikkeibp.co.jp/…/column/00014/070100019
そこに現れたのが、東証プライム上場のDXサービスSansan創業者の寺田親弘さん。サテライトオフィス第1号を皮切りに面白い人が集まり、苦難を経て自らの夢である教育機関、高専の創立に至りました。
2014年に消滅可能性都市となると、役場職員も本気で民間と共に戦略を策定しました。その大きな推進力となったのが、町とNPOが共同で出資した神山つなぐ公社でした。
この一般社団法人が中心となって、たくさんのプロジェクトが巻き起こりました。今回の勉強会の本推薦人・発表者である佐久間さんは、この循環を神山モデルと題して図式化してくださいました(詳しくは記事)。
人の「ターニングポイント」の8割が、本人の予想しない偶然の出来事であるという「計画的偶発性理論」も興味深かった。
多様なバックボーンをもつ方々を受け入れ、連鎖的にプロジェクトが立ち上がる。この連鎖をドライブさせているのが神山つなぐ公社といえるのかと思います。
館山でも私が越してきた13年前から多くのプロジェクトを見て、一部参加してきました。「まちづくり」といっても言葉は美しいが、所詮儲かることではありませんから、「金の切れ目が縁の切れ目」なんてことが多々あります。
神山町で起きた現象はまさにマズローの欲求5段階説でいう、欲求の最高段階「自己実現」のように見えます。ただ、そんな高尚でなくとも、「面白そう」「楽しい」というエネルギーが大きなうねりに変わったように感じます。
一つは町の規模もありますね。館山の場合は町村のように小さくもなく、自治体の適正規模とされる15万〜20万人と板挟みの大きさ。
行政の効率化もさほど進まず、かといって日々住民の活動が「見える」わけでもない。
でも、この勉強会を終えてからいろいろと考えて人口の論点はやめようと思いました。だって、神山町のような規模の自治体は他にもたくさんありますから。自治体規模を「できない」理由にするのは逃げに違いない。
学ぶことがあるとすれば、うねりを生み出す神山つなぐ公社のような存在ですね。ただこの法人も、財源は地方創生関連の交付金。これほどまちに利益を生み出していればまちがお金を出してもよさそうですが、そんな簡単な話でもなさそうです。
地域プロジェクトを有機的に連鎖させる=ファシリテーションできる機能をどのようにつくっていくのかが問われているなぁと感じた一冊でした。