
1日目は、北九州空港に到着してそのまま、トラフグの陸上養殖を行う山口県長門市の「長州ながと水産」に伺いました。下関を通り越して日本海側まで1時間半の移動。

同社は建設会社が建設業の将来を見つめて養殖事業に参入した事例で10年を迎えます。HPによると「目指すべき地域の未来を本気で考え、地元産業に貢献する」という挑戦です。

到着すると社長とスタッフから説明を受けました。まず驚きは、トラフグは1尾150円で稚魚を購入、キロ3500円ほどで加工事業者にわたり、店頭価格は約3万円に。つまり、原価から200倍になる事業ということ。


もちろん研究、設備、技術への投資は相当額で単純な話ではありませんが、トラフグ産業の大きさを感じる分かりやすい数字でした。

漁港施設を有償で借りて、稚魚3万5000、成魚3万5000を養殖。社員は5人で、年数回ある歯切りの作業時はベテランのパートの力も借りているそうです。

そう、トラフグは貝もバリバリ割ってしまうほど強靭な歯の持ち主。養殖だとかみ合うこともあり、一尾ずつ歯を切る作業が最も大きな労力だとのこと。
地形を利用して漁港とは反対側の外洋から海水を引いて、内湾に排水するシステムも立地的な特徴でした。

一方課題は、昨今の海水温の上昇の一言。フグのストレスに直結するそうです。詳しくは聞けませんでしたが、深い海域から水を引くことも設備投資やメンテナンスなど採算に合わないのかもしれません。
産卵場が形成される館山湾周辺では養殖の可能性も大きいそうです。にわか知識ですが、実は下関には養殖場は少なく、九州に集中しているようですが、各地で赤潮の被害に悩まされているそう。
館山湾はほぼ赤潮もなく、また沖の深層から表層へと流れる「湧昇流」の存在も知られています。そんな特徴を生かした養殖場が生まれたらと妄想は膨らみます。
容易なことではありませんが、「海業」含めて、今回の下関との親交を積み上げて官民連携の取組が生まれることを期待したいと思います。
この日はそのまま下関に戻り、藤フーズ代表取締役で、下関市鯨肉消費拡大推進協議会会長である青木光海さんが開いたクジラ料理専門店「日新丸」へ。(もちろん自費です)

青木さんといえば、山口県飲食業生活衛生同業組合の理事長で下関ふく連盟の理事。翌日は藤フーズの加工場にも視察に伺いました(私は下関水産大学校へ)。






部位ごとの刺身、唐揚げ、ピザ、メンチ、鯨骨ラーメンに至るまで魅力的なメニューの数々。店の運営には大半が女性の活躍という点も素晴らしい。
若い人にクジラの美味を知ってほしいという青木さんのアイデアが凝縮され、連日人気店ということで、ぜひ下関に行った際は寄ってみてください。
下関市議会議長の香川さんと副議長の安岡さん、そして元下関市長の中尾さんが同席してくださり、意見交換も大いに盛り上がりました。この日の青木さん語録は、「泊食分離」でした。

店を出ると、中尾さんが案内してくださったのは、「ふくの像」。唐戸市場の夜景を見晴らす絶景の前に鎮座しておりました。さすがはフグの聖地ですね。